考えていること

皆様がお住まいの地域にも「公共ホール」があることが多いのではないでしょうか?

いやいや、もう近くのホールはなくなってしまったよ、とのお声もあることかと思います。

 

仮に存続していたとしても、そのホール(自治体や財団、指定管理者など)が、地域の方々のための催しものを一定の数、制作できていることは、残念ながらあまりないのが実情ではないかと感じています。

 

ありのみ株式会社設立(2007年)の大きなきっかけとなったのは幸運にも、東京都三鷹市の公益財団法人三鷹市スポーツと文化財団から

「学校の音楽室での演奏」と「ホールでのコンサート」を組み合わせた事業にお誘いいただき、“風の五重奏団”を結成して活動を始めたことでした。

 

「こういうことをがんばっていかなければいけない」と、一人のホルン奏者という立場ながら強く感じたことを、よく覚えています。

 

学校での演奏では最後に「今度はホールに聴きに来てね!」とご案内し、メンバーが出演するコンサートや、メンバーが指導しているジュニアオーケストラのコンサートのお知らせなどもします。

 

こうすることで、ホールへの人の流れをつくることに少しでも貢献できれば、という思いで、たくさんの方々のお力添えをいただきながら、がんばって参りました。

 

上記の仕組みをご紹介した自治体の中には、関係者の皆様のご尽力により、まず学校での演奏を文化庁「芸術家の派遣事業」を利用して立ち上げ、その街のホールでのコンサートを実現できたところが複数あります。

 

特に文化庁「芸術家の派遣事業」(主に学校の音楽室での演奏)では、全国各地から多くのオファーをいただき、これまでに2000回以上の公演を行ってきました。

 

現場でいただいたご意見を20年近くに渡ってこまめに取り入れ続けることで、約50分の間に100枚以上の映像を併用し、プログラムには聴衆全員がハンドベルで参加できるオリジナルの共演曲を含む、とても質の高い、かつ楽しいコンサートになっています。

 

そして、投影原稿の改良や新しいプログラムの開発は、今日も続いています。文字通り「みんなでつくったコンサート」です。

 

また、多くの公演を行えたことで積み上がったリパートリーを少しずつ録音し、5枚のCDを製作することもでき、音源は様々な形で配信されています。

 

同一団体で5枚のCDを製作した木管五重奏団は、非常に珍しいと思います。これはひとえに、たくさんの演奏の機会を与えてくださった全国各地の皆様のおかげです。

 

 

現在の日本の状況は、どこを見ても非常に厳しいものであることは皆様ご存じの通りです。

 

しかしどこに住んでいたとしても、例えば小学校6年間で一度くらいは、いつもの音楽室でプロの演奏家による生の演奏を聴いたり、

せめて一年に一回くらいは近くのホールで良質なコンサートなどを楽しむことくらいはできてもよいのでは?

 

そしてそのために、いつもお世話になっているホール関係者の皆さんや学校の先生方のように、我々大人がもう少し汗をかいてもよいのでは? と考えています。

 

いつかどこかで皆様とお会いできますように。

 

2023年11月

ありのみ株式会社代表取締役

“風の五重奏団”・“風の合奏団”プロデューサー

小川正毅